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(2009/11/12)

第60回NHK紅白歌合戦
制作統括 井上啓輔プロデューサー
「“メモリアル紅白”は、視聴者の皆さんと出演者が近い紅白にしたい」

11月1日に第60回NHK紅白歌合戦60日前のカウントダウンが始まり、年末の風物詩である紅白の話題もいよいよ熱を帯びてきた。節目を迎える今年の紅白の方向性や理想像を、制作統括を務める井上啓輔氏に聞いた。


■視聴者参加型の番組で「歌力」の集大成

――今年の紅白は第60回の「メモリアル紅白」ということですが、より一層華やかなお祭りになるんでしょうか。

井上 紅白は毎回毎回がスペシャルな番組ですから、60回だからといってそこに力点を置くことは考えていないんです。むしろ、一昨年の第58回から「歌力(うたぢから)」という共通コンセプトでやってきて、今回は「歌の力∞無限大」をテーマとした集大成の年ですので、1曲1曲の歌の力を、大切に伝えていくことに力を入れたいと思っています。歌をどれだけ高く飛び立たせることができるか、その滑走路としてのトーク、MCがある。今年の第1部は例年より5分早めて19時15分からスタート。第2部はこれまで21時30分からスタートしていましたが、今年は30分繰り上げて21時からのスタートとなり、第2部の尺を長く取っています。放送時間は、過去最長の4時間25分になりますが、それによって増えた時間は出演者を増やす方向ではなく、より丁寧なプレゼンテーションのために使いたいと考えています。


――昨年に続いて、テリー伊藤さんと関根麻里さんが「紅白応援隊」として既にPR面で活躍されていますね。また、今年は新たにWEBサイトなどデジタルツールで紅白を盛り上げる「紅白デジタル応援隊」として水樹奈々さんが加わりました。

井上 本当にお三方にはお世話になっています。テリーさんにも、いろんなメディアで紅白について発言していただいて、すごく励みになっています。紅白というのはNHK、民放の枠を超えた「テレビのお祭り」だと思うので、大いに盛り上げていきたいですね。


――今年は、紅白オリジナルソングの歌詞のもとになるフレーズを視聴者から募集されていましたね。

井上 今年の紅白の目玉の一つとして、久石譲さんに出場歌手全員で歌うオリジナルソングを作っていただきます。まず、『歌の力○○○』というワンフレーズを視聴者の皆さんから募集(11/8締切)し、その言葉を歌詞に織り込んで、視聴者の皆さんと久石さんの感性を結びつけた歌を作っていただきます。要は、紅白歌合戦はみんなのものであってほしい。これまでのように一方的に発信するのではなく、『視聴者参加型紅白』にして、視聴者の皆さんと出演者が近い紅白にしたいんです。ですから「番組を一緒に作りましょう!」と、いろいろな形で呼びかけをしているんですよ。PRには例年以上に力を入れていまして、オリジナルソングのフレーズのほかにも、テリー伊藤さんが出演されている『パフォー!』(NHK総合テレビ・第2・4土曜深夜0時〜)とのコラボレーション企画で、大晦日の本番にテリーさんが着る衣装のデザインも公募しています(11/21締切)。また、全国各地の放送局で開いている「巡回展」もその一つ。パネル展示のほか、優勝旗のレプリカと記念写真を撮れるコーナーがあり、ご好評をいただいています。本来は、愛宕山の放送博物館に展示してある本物の優勝旗をお見せできればいいのですが、第1回(昭和26年)からずっと使い続けていてかなり傷んでいますので、本物を持ち出すのは難しいんです。


――ちなみに、一般公募をもとに番組オリジナルソングを作るという試みは、『24時間テレビ』(日本テレビ系)の「サライ」を意識されたのでしょうか。

井上 いえ、まったく意識していませんでした。というよりも、後から、ああ、「サライ」もそうだったなあ、と気づいて。でも、「サライ」のように毎年歌い継がれるような歌に成長していってほしいなと思いますね。日本人の琴線に触れる素晴らしいメロディーですので、その可能性を持っていると思います。


■近年の紅白は出演者と視聴者の接点がぐっと近くなっている

――さて、注目のキャスティングの構想についてお話いただけますでしょうか。

井上 例年どおりではありますが、まずは、今年を代表するヒット曲を出したアーティストですね。昨年、Mr.Childrenさんに初めてご出演いただきましたが、今年もヒット曲を出したアーティストに出演していただけるよう交渉していきたいと思っています。それから、世代を超えて共有できる歌を持っているアーティスト。さらには、僕たちのほうからレコメンドするアーティストですね。「いい歌ですから、聴いてください!」という、作り手の主張は絶対に必要ですから。それはもしかしたら古い歌なのかもしれないし、無名のアーティストの無名の歌なのかもしれませんけれども。出場者の発表をお楽しみに、というところですね。


――紅白といえば、大きな話題になるのが「視聴率」です。昨年の第59回は、第2部が関東地区で42.1%を記録、3年ぶりの40%超えで話題になりました。

井上 僕が01年の第52回の紅白で総合演出を務めたときの視聴率は48.5%(第2部)だったのですが、この数字でも当時は褒められることはなく、「悪くないね」「まあよかったね」といった評価でした。ただ、僕自身の印象としては、58回、59回のほうが視聴率は取れていないとしても、内容は当時よりずっといい。出演者と視聴者の接点がぐっと近くなっているように思えますし、『歌力』をテーマにしたこの2年、確実にグレードが上がってきていると思うんです。逆に、50%とっていた時代に視聴者はみんな満足していたかといえば、もしかしたら、そうではなかったかもしれない。そういう時代から、いろんな立場で紅白にかかわってきた感想なんですが…。


――数字よりも中身である、と。

井上 もちろん、たくさんの人に見ていただかなくてはならない、という使命はあります。数字が悪ければ、中身はよくてもダメだったね、といわれる現実はありますから、そのあたりはきちんと数字を受け止めなきゃいけないんですけどね。でも、精一杯やれば結果はついてくるだろうと思っています。そのためにも、「楽しいテレビのお祭りをぜひ見てください」というPRは、あらゆる世代に向けて、最後の最後まで続けていきたいなと思っています。


■日本人の体に埋め込まれた体内時計のような役割を果たしたい

――そんなさまざまな施策を施された、第60回紅白歌合戦。どんな番組にしたいですか。

井上 孫からおじいちゃん、おばあちゃんまで、世代を超えて家族が一つの世界を楽しめる。そういう空気を作り上げることができたらすばらしいと思います。演歌を聴いて泣いているおばあちゃんを10代の孫が見ていたり、J-POPを聴いて喜ぶ孫をおじいちゃんが見ていたり。世代を超えた繋がり、空気感を出していければ。今、なかなかそういうアイテムがないと思うんです。これはテレビそのものの役割、という話にもつながっていくんですが…。実際、自分が子どもの頃に見ていた紅白の記憶としてまず思い浮かぶのは、家族で見ていたシチュエーションなんですよね。ある年は、帰省したおばあちゃんの家で見ていた。また、ある年は親父が出張でいなかった。ある年は改築する前の家でみんなで見たな、とか…。要するに紅白って、日本人の体に埋め込まれた体内時計のような役割を果たしているんじゃないかなって思うんです。そんな番組が作れれば理想的だと思います。


――確かに紅白は、そんな可能性を持った数少ない番組の一つですよね。では、最後に意気込みを。

井上 紅白は、他とは比べ物にならないほど、大勢のスタッフが参加し、労力をかけて作り上げる番組。出演歌手の皆さんや視聴者の皆さんの力も結集して、とにかく「面白いもの」にしたいという思いが強いです。一人でも多くの方に見ていただいて、明るい気持ちで年を越せるような番組にしたいと思います。

井上啓輔氏
井上啓輔氏
第60回NHK紅白歌合戦 制作統括/
NHK 制作局 エンターテインメント番組
チーフ・プロデューサー

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