ヒットがみえるエンタメマーケット情報サイト

  • ORICON BiZ onlineのご案内
  • お問い合わせ
  • サイトマップ

連載コラム : 亀田誠治

感度のいい音楽ファンにアピールする
FACTの"アップデート"感

    『In the blink of an eye』
(MXMM-10010)
1月13日発売

99年結成。米VAGRANT RECORDSとも契約した“逆輸入”ロックバンド。09年発売のアルバム『FACT』が日本でもロングセラーとなり、それに続く本作では自身初の週間TOP10入り(6位)を果たした
   

■「能面」は“とっかかり”に過ぎない

 FACTの『In the blink of an eye』が初登場6位。09年「能面」キャラで衝撃のメジャーデビューを果たした彼らが、「脱・能面」を打ち出したニューアルバムです。

 彼らの音楽を聴くと、能面だとか、海外有名フェスへの参加だとか、アメリカからの逆輸入といった話題性は、ほんの「とっかかり」にすぎず、結成10年(!)ひたすらラウドなギターロックを鳴らし続けた、真摯で純粋なバンドだということを感じます。

 レコーディングはアメリカ仕込みという徹底したサウンド指向。しかもグリーン・デイやインキュバスといった、諸先輩方と同じ制作スタッフによって作られるサウンドは、完全に洋楽に聴こえます。このような英語歌詞のギターバンドを捕まえて「だったら洋楽聴けば?」と言うのは過去を生きる人の話。今の人は「だったら洋楽になってしまおう!」と考える。この、発想が今の時代を生き抜く強さだと思います。そして、いっそ洋楽になるためのいかなる努力も怠らない。その成果が見事にFACTの音楽性に表れています。

 とはいえ、FACTのようなラウド・パンクバンドは、油断すると「らしさ」だけが印象に残り、多くのバンドの中に埋もれてしまうんですね。ほら、スポーツ番組の好プレイのシーンやプレイステーション3のゲームのBGMで流れるようなスピード感のあるバンドサウンドってあるじゃない?そんな「ノリの良さ」だけでくくられちゃう。そこで彼らがデビューの時に掲げたのが「能面」というキービジュアルです。全員が白い能面姿でラウドなサウンドをかき鳴らす姿はインパクト十分。「能面」=「JAPAN」=「FACT」というカルチャライズされたイメージの連鎖は非常にわかりやすく、多くの海外の音楽ファンの注意を引くことが出来たはずです。


■気持ちをキュンとさせるギターリフが人気の秘密

 そんな彼らが「もう、いいでしょう」(黄門様みたい!)と、「脱・能面」を宣言。理由は、「もう、とっかかりは出来たから」。潔い!KISSのように40年も変装キャラを続けているバンドもあるのに、時代の微妙な変化に順応して、サクっと「己(おのれ)」をアップデートする。感度のいい音楽ファンもそこに反応しているのでしょう。

 そもそも、以前からYouTubeの海外ライヴの映像では、脱・能面した映像が流れているし(海外の小さなライヴハウスで、すっぴんで暴れまくっている少年性に、胸がキュンとします…)、音楽を音楽として伝えるために、けもの道を自ら開拓していくところに、アーティストパワーを感じます。

 全編を貫く、駆け抜けるようなギターリフは、たいへんキャッチーなものです。元来ロックのギターリフには、弾く人&聴く人の鬱屈した気持ちを発散させるデトックス効果が強く見られますが、FACTのギターリフは、すがすがしくて、ちゃんとコードとして機能していて、気持ちをキュンとさせるポジティブなエネルギーに満ちています。

 アレンジもサウンドメイキングも凄く精密で、ボーカルと同じくらいバンドサウンドにプライオリティーを置いていることが伝わってきます。ここがFACTの一番の強み、音楽ファンが「本物!」と感じるツボではないでしょうか。では!



    07年に発売されたカニエ・ウェストのアルバム『グラデュエーション』。本作からの先行シングルとなった「ストロンガー」のPVは、東京・新宿で撮影されたシーンを中心に構成された映像と、カタカナの字幕が話題に。カニエ自身の日本カルチャーへの興味の高さを物語っている
   

 欧米人にとって、わかりやすいJAPANカルチャーって何でしょう?「マンガ?カラオケ?歌舞伎?柔道?」これは、簡単なようで実は難しい。つい最近まで欧米人から観たJAPAN観には大きなズレがありました。代表的な例としては、映画『ブレードランナー』(82年)に出てくる「JAPAN」は中国、韓国、日本のチャンプルーになっていたでしょう?

 最近では、マンガやイチロー選手の活躍に代表される「クール・ジャパン」の浸透によって、このようなアバウトなJAPAN観は陰を潜めました。カニエ・ウェストのPV「ストロンガー」では今のTOKYOが、映画『バベル』にいたっては、TOKYOの街だけでなく、そこに生きるJAPANESE(日本人)の人間性まで浮かび上がらせることに成功しています。やはり、ハードではなくソフトが世界を動かしていくのですね。


亀田誠治 公式ブログ「亀の漫遊記」
http://www.ganso-makotoya.com/blog/

Profile:1964年、N.Y.生まれ。幼少の頃よりクラシックギター、ピアノなどを学び14歳でベースを弾きはじめる。89年頃より、アレンジャー・プロデューサーとしての活動を始める。これまでに椎名林檎、スピッツ、平井堅、スガシカオ、アンジェラ・アキ、Chara、木村カエラ、秦 基博等のプロデュース&アレンジを手がける。アーティストの長所を引き出す「いいとこどり」が得意。ビートルズと太宰治と赤塚不二夫をこよなく愛す46歳。

Go to Page Top


週刊『コンフィデンス』とは

@音楽・映像・書籍のランキング&マーケット動向
Aエンタテインメント市場の調査・分析
B人気作のヒット分析
C業界キーマンのインタビュー

などが網羅できる定期購読誌です。


コンフィデンス 雑誌購読のお申し込み

 

Go to Page Top