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【要約】3団体トップ鼎談 ニッポン放送「いま、音楽にできること」

(2020/06/19)

 
 音楽業界の主要3団体のトップが、新型コロナウイルスで大きな影響を受けたエンタメ・音楽業界について語り合う、ニッポン放送の特別番組『いま、音楽にできること』の第2弾が6月16日18時より放送された。前回4月18日の放送に引き続き、日本音楽事業者協会会長の堀義貴氏、日本音楽制作者連盟理事長の野村達矢氏、コンサートプロモーターズ協会会長の中西健夫氏に加え、ゲストとして音楽プロデューサーの小林武史氏、SHOWROOM社長の前田裕二氏が出演し、それぞれの立場からウィズコロナ、アフターコロナにおけるエンタメの形について議論が為された。

ライブ事業に従事する人々を救済する基金「Music Cross Aid」設立

 番組冒頭は、「エンタメ・音楽業界トップ鼎談〜いま、音楽にできること〜」と題し、堀氏、野村氏、中西氏の鼎談で始まった。コンサートやイベントの中止によって音楽業界は3300億円もの損失を被ったと言われている。アーティストや音楽関係者全体に大きな影響が出ている中、ライブハウスが6月19日から営業を再開できるなど、エンタメ再開の兆しが見えてきている現状について、3氏は率直な気持ちを語った。

堀氏「徐々にライブも、演劇もお笑いもガイドラインを自分たちで作って再開に向けて前向きに考え始めている。テレビも収録が始まり、リハーサルはフェイスシールドとマスクで行い本番で外すなど、不安があるにしても、なんとかお客さんのために前を向いていこう。ある時期よりは、みんな力強くなってきている気はする」

野村氏「緊急事態宣言が解除されて、少しずつイベントができそうな見通しもあったりするが、、この数週間に夏フェスの中止も相次いで発表され、季節の楽しみが続々と中止が発表されている状況。再開に向けての希望と現実が共存している状況で、まだまだ先行きが暗いのかなと感じている」

中西氏「ガイドラインに沿ってやると経済的に成り立たない。かといって、ライブがないというのは仕事がないということ。たとえ完全な形でないにしても、仕事を作るというのも我々の仕事。これからはウィズコロナだと思う。何もしなければなにも起こらない。何かをしたときに何かができることを僕らは考えていくべき」


今が、音楽の楽しみ方を解き放つチャンスではないか

 今日出演した3団体はライブ事業に従事する人々を救済する基金「Music Cross Aid」を立ち上げ、6月11日より寄付金の受付を開始した。この基金についても触れ、次のように呼びかけた。
野村氏「ステージに立つアーティストだけでなく、そこに関わるスタッフ全てが表現者。今、コロナの影響で非常に厳しい状況になっている。そういう人たちを助けるために業界が自分たちで支援できる受け皿を作った。普段、音楽エンターテイメントに接して、自分の生活を潤してもらっていると考える人は、次の未来のライブエンターテイメントを支えるために、ぜひ基金に協力していただきたい」

 続いて、ゲスト出演した音楽プロデューサーの小林武史は、
「今は経済の蛇口を開けながら、一方でその蛇口を締めるエネルギーもかけるため、ストレがかかっている状態」であり、その塩梅が難しいと前置きし、「近年はクラブミュージックに代表されるような、高密度の空間で圧縮された音を爆音で聴くような傾向にあった。それを楽しめる状況に戻ってほしいし、いずれそうなると思うが、一方で高密度ではない環境のなかで音楽を楽しめる方法もあるのではないかとも思っている」と語り、今が、音楽の楽しみ方を解き放つチャンスではないか、と持論を展開した。

“利他市場(投げ銭市場)が盛り上がっていく変革期

 19時台にゲスト出演したのはライブ配信プラットフォームSHOWROOM社長の前田裕二氏。新型コロナウイルスの影響でオンライン・配信の需要が高まっていることに話が向けられると、
「還元・進化・融合」の3つのキーワードを挙げて、「コロナ禍において、IT業界は業績が伸びているところが多いはず。ライブ配信業界も例外ではなく、放送する側も、視聴する側も増えている。人とつながりを持つためのギフティング(課金)も、物販も伸びている。でも、僕が元々起業する理由にもなった音楽が今、苦しんでいる。そこで、 “還元”をキーワードにエンタメ産業に明確な支えを提示していきたい」と、“音楽”に、恩返ししていきたいという熱い思いを語った。

「“進化”は“融合”にも関わってくるが、もともとの市場規模を補填するだけではなく、上回っていきたいという思いがある。進化の部分は2つあり、1つはオンラインのオーディエンスに向けてどうビジネスを作っていけるか。それはリアルのステージに関わってきたスタッフの職能を活かした価値提供を、オンラインでも作っていけるかに繋がっていく。もう1つは 幅か深さという議論をよくするが、エンタメは基本的には客数を伸ばすことで売上を作っていくビジネスモデルだが、感動の深さを刈り取る仕組みはビジネス化されていなかった。そこが僕らのやっているギフティングの仕組み。深さのビジネスをいかに現実のものにしていくか。そこが今、形になってきているのが、僕らの奮い立つポイントになっている。ただし、この深さ進化の部分は、僕らのビジネス側だけでは解決できないことで、ユーザー同士の金銭の授受は、資金決済法や銀行法など、いろんな法律が関係してくる。日本ではいわゆる投げ銭と言われるものの法律が整備されておらず、今、まさにその法整備の必要性に迫られているときだと思う」

 また、コロナ禍で“利他市場(投げ銭市場)が盛り上がっていく変革期ではないかとも語った。
「投げ銭というと“銭を投げる”ので、卑しいという日本の認識があると思うが、そうではなくて感謝や応援の感情、それが最終的には自分に跳ね返ってくるので利己かもしれないが、誰かのために何かをしたいという発露として、利他市場、投げ銭市場が盛り上がっていく構造を、エンタメ発で作って、別の産業にも広げていくことができると、法整備の優先順位が上がっていくのではないか」
「コロナによって人の繋がりとか、心の温かさがどれだけ重要であるかを僕らは実感した。だからこの利他市場は広がっていくと確信しているが、現状の法や現状の経済システムが利己を前提に立っている仕組み。しかし、それが変わっていく、100年に1回の変革期かもしれない」


 番組エンディングで、3団体のトップはエンタメ・音楽の未来についてそれぞれの思いを語った。
堀氏「新しい生活のなかに溶け込めるようなエンタメントをどんどん作っていかなければいけないし、発明したい。待っている人のために頑張りたい」

野村氏「音楽の可能性がまだ見つけられていない、もしくはまだやれてないことがいっぱいあることが分かった。起き上がるために大変な人もたくさんいるので、今回立ち上がった基金に協力してほしい」

中西氏「僕らのライブも8月くらいには再開できるような形にしたいと思っている。ウィズコロナの時代なので、共存共栄だと思う。そういう意味で、ネガティブなことだけを考えるのでなく、ネガティブもわかったうえでポジティブに生きていく、そうした発想でやっていきたいと思う」


 司会を務めたニッポン放送の吉田尚樹アナウンサーは「今日の放送が10年後、20年後に意味を持っていたらいい」と語り、番組を締めた。

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