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(2012/09/10)

タイトル伏せて売上10倍〜ワクワク感を刺激する新感覚ブックフェア


おしゃれなカバーデザインで、ブックカバーとしても利用できる。とくに人気の高い「まくらことば」は、「あした世界が終わる日に一緒に過ごす人がいない」と、「くまにさそわれて散歩に出る。」


まるで闇鍋感覚。統一されたデザインのカバーがかけられた本がずらりと並ぶ、紀伊國屋書店・新宿本店のフェアの棚。好評につき9月16日まで延長が決定した

 作品の書き出しが大きな文字で書かれたカバーがかけられ、中身が見えないようにビニールにくるまれた本がずらりと並ぶ。タイトルも装丁もわからないまま、ただ書き出しだけを手がかりに本を選ぶという「ほんのまくら」フェアが今、思わぬ反響を呼んでいる。読み手の感性に訴える企画のいきさつについて、仕掛け人に話を聞いた。

 フェアを企画したのは紀伊國屋書店新宿本店で仕入れを担当する伊藤稔氏。当初、1500冊ほど仕入れて、1ヶ月の期間中に7〜800冊売れればと思っていたという。それが1ヶ月足らずで合計7000冊以上を売り上げる大ヒットに。ブレイクしたのは7月26日にフェアを開始して10日ほど過ぎた頃のことだ。

「8月5日に、人気ブロガーの伊藤聡(そう)さんがTwitterで『本の闇鍋だ』と写真付きで紹介してくださったのですが、その反響がすごくて、著名な方もコメントされて、それで一気に広がったんです。2日後には全仕入れの半分ぐらい売れてしまって、棚がガラガラになってしまったので慌てて追加補充をしました」

 それにしても本を選ぶ手がかりといえばランキングや好きな作家、面白そうなタイトル、目を引く装丁というのが相場だが、このフェアはそのいずれとも無縁だ。

「ランキング上位の人気タイトルを購入する人は多いです。多くの読者が面白いというからには、確かにハズレはないと思うのですが、もう少し自分の感性、感覚で選ぶ機会があってもいいのでは、と思います。それで失敗するかもしれませんが、普段の自分だったら絶対に買わないような本を選ぶというようなこともあっていいと思うんですよ」

 そう語る伊藤氏。“自分の感性”を頼りに選んでもらうというコンセプトは徹底していて、それぞれ本が並ぶ棚に添えられた書店スタッフのコメントも最小限だ。

「スタッフ色がなるべく出ないようにしたかったんです。もちろん選ぶ側の思い入れはあるのですが、作品の書き出しに注目してもらって、お客様の直感で本を選ぶ、作家と読者の方が直接結びつくようなフェアにしたいと思っていました」


■感性を頼りに本を選ぶという遊び心を刺激する仕掛け
 “本屋大賞”の成功に見るように、最近は書店員の推薦もヒットにつながる要因。地方書店の手書きのPOPがきっかけでベストセラーになった例もある。だがこのフェアはそんなプロモーションともひと味違う。なぜこれほど受けたのか。

「中身が見えないというリスクを面白いと思ってくださる方が多かったということと、やはりSNSの力ですね。普段、あまり本を読まない方もネタとして消費しやすいということもあったかもしれません。値段の安い文庫ということもありますし、カバーのデザインもよかったと思います。理由はさまざまですが、とにかく楽しんでくださっているというのがいちばんですね」

 わずか数百円のリスクとワクワク感。2つを天秤にのせて、ワクワクしてみたいと思わせる仕掛け。自分の感性頼みでセレクトするという目新しさがヒットの背景にはありそうだ。今回セレクトした100冊の本の中には版元に在庫がなく、補充がきかない本も出てきているという。埋もれていた作品にスポットライトを当てるという想定外の結果をもたらした今回のフェア。売り手として、もっと多くの人の目に触れてほしいと思う作品にいかに目を向けさせるか。「ほんのまくら」フェアの成功は、ひとつのヒントになるかもしれない。


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