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(2011/01/20)

時代劇映画、ヒットのカギは“癒し”よりも“ストイックさ”

  『大奥』『十三人の刺客』『最後の忠臣蔵』など2010年は時代劇ブームとなった。このブームの先陣を切ったのが『必死剣鳥刺し』。同作を監督したのは、2月11日に早くも新作『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』の公開も控えている平山秀幸監督。同監督が『必死剣〜』で目指した時代劇の演出・世界観はどこまでも“ストイック”なものだった。そしてそれがヒットした結果を見る限り、“癒し系”とは一線画す、平山監督の描く“ストイックな人間ドラマ”こそが今、求められているのだと分かるだろう。

「必死剣鳥刺し」
(C) 2010「必死剣鳥刺し」製作委員会


■“癒し系”とは一線画す本格時代劇がスマッシュヒット

 2010年の日本映画で特筆すべきは、時代劇が数多くつくられたことだった。なかでも10月に劇場公開された『必死剣鳥刺し』はひさびさの本格時代劇。近年数多い藤沢周平の小説の映画化ながら、ハードボイルドな眼差しを貫き、リアルで緊迫感に溢れた殺陣で圧倒する。『愛を乞うひと』、『しゃべれどもしゃべれども』など、ジャンルを問わずに秀作を生み出す、平山秀幸監督の精微な演出が光っている。

 「最初に電話を受けたとき、“グルメもの”と思いました(笑)。準備稿を拝見して、急いで原作である藤沢周平の短編を読みました。原作が、これまでの藤沢作品の映画化のような“癒し系”にすると、かえっていやらしくなる肌合いでしたから、ハードに挑んでいいかと確認を取りました。色目でいえば、ブルーの色合いのものを無理やりセピアに仕立てることはおかしいと思いました」(平山秀幸氏)

 藤沢周平の小説の映画化というと、山田洋次監督の3作品が描き出した、清貧、温もりのある世界が頭に浮かぶが、この作品は大きく様相を異にする。演出の眼差しが情に向かわずに、ストイックに武士の生き方を貫く姿をクールに描いている。ここに平山監督のスタイルがある。

 「どんなキャラクターであっても、僕は主人公の側にべたっと寄れません。抱き締め切れない。どこか距離感をおいてみています。がんじがらめの立場になった剣豪であり、最後に背負わなければいけないものがあるといった、映画に必要なキーワード以外は、普通のおっさんだと考えました。上からも、下からもいろいろ言われながら、愚痴も言わずに、黙々とこなしていく、その姿勢がハードボイルドではないかと思いました」

 平山監督はかつて、どんな題材であっても“来たタマは打つ”を身上にしていると語ったことがある。引き受けた作品は必ず“落としどころ”をみすえて収斂する方法で、多くのジャンルに挑んできた。

 「この作品では、クライマックスを理屈抜きのチャンバラとしてみせようというところが“落としどころ”ですか。そこに至るまでは静かに進んで、お客さんに辛抱させるかたちをとりました」

『必死剣鳥刺し』(DVD)
『必死剣鳥刺し』(DVD)
発売:12月24日
価格:4935円(税込)
発売:ポニーキャニオン

 

『必死剣鳥刺し』(Blu-ray)
『必死剣鳥刺し』(Blu-ray)
発売:12月24日
価格:4935円(税込)
発売:ポニーキャニオン



■『大菩薩峠』『宮本武蔵』を参考、古典的風格を備えた仕上がりに

 もっとも苦労したのは必死剣の型だったという。原作には描写が少ない必死剣をどう表現するかを、殺陣師・久世浩とともに試行錯誤を繰り返すことになった。

 「藤沢さんがご存命であればお聞きしたかった。映画的にどうみせればいいか、主人公が追いつめられて、パッションの爆発が感じられるような技にしたかったので、臨床学を勉強し、主人公の存在が破裂するための必死剣に見えればいいというところで落ち着きました。CGで後処理をしないで、血糊を使う立ち回りにしたため、失敗できないとスタッフ、俳優さんに緊張感がみなぎりました。それが画面に反映されていますね」

 平山監督は登場人物の所作、佇まいにこだわる。本作に挑むにあたり、内田吐夢監督の『大菩薩峠』や『宮本武蔵』、大映の市川雷蔵主演の作品をみて参考にしたという。ひさびさの本格時代劇。古典的風格を備えた仕上がりとなっている。

 「チャンバラとなると俳優さんの背筋がみんな伸びる。自然に背中がまっすぐになります。撮影冒頭2日間は200人ぐらいの俳優さんが並ぶシーンを撮影しましたが、横移動のカメラ越しにみながら、きれいだなあと思いました。現代劇にはないカタルシスがありました」

 普段も寡黙な主演の豊川悦司に、主人公は2日も口を閉じたままでいるキャラクターだという点だけを確認をして、役づくりは任せたという。すべては豊川さんの功績と語る平山監督に、最後に今回のDVD化にあたっての感想を尋ねた。

 「DVDは、サウンドをはじめ、技術をそのまま再現してくれます。最近はシネマコンプレックスが増え、いい設備で鑑賞できるようになりましたが、まだまだDVDに敵わない映画館はあります。僕自身も、細かい点まで気づくのは、自分の部屋でDVDを見ているときです。この作品ではスタッフたちの細かい技術を楽しんでもらいたいですね」

 それでも撮影はデジタルよりもフィルムにこだわりたいと続ける、根っからの映画監督。今後の活躍を期待したい。

平山秀幸
平山秀幸
1950年福岡県生まれ。90年に『マリアの胃袋』で監督デビュー。98年『愛を乞うひと』がモントリオール映画祭国際批評家連盟賞、第22回日本アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞など多数の賞を獲得し、国内外で高い評価を得る。主な作品に『レディ・ジョーカー』(05年)、『しゃべれどもしゃべれども』(07年)ほか多数

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