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(2017/04/17)

『やすらぎの郷』プロデューサー、倉本聰脚本のテレビ界への皮肉に覚悟

テレビ朝日 総合編成局 ドラマ制作部 プロデューサー 中込卓也氏
『帯ドラマ劇場 やすらぎの郷』(EX系 月〜金 12時30分〜12時50分/BS 朝日(再放送) 毎週月〜金 7時40分〜8時)


 テレビ朝日の昼ドラマ『やすらぎの郷』(月〜金曜日 後12時30分〜)は、脚本家・倉本聰氏のオリジナル物語で豪華キャストが出演。同作は、テレビ界への痛烈な皮肉も含まれた内容だが、倉本氏の渾身の脚本に現場の士気も高まっているようだ。同局総合編成局ドラマ制作部のプロデューサー・中込卓也氏が、企画の経緯や挑発的なドラマへの思いを語った。

◆倉本聰先生に一喝されて本当の覚悟ができた

 テレビ朝日が新たに昼の帯枠「帯ドラマ劇場」を設定し、4月3日より『やすらぎの郷』を放送している。倉本聰のオリジナル脚本で、超豪華キャストが集い、テレビに貢献したキャスト・スタッフ専用の無料老人ホームを舞台に、入居者たちの綾なす悲喜こもごもの人間ドラマを丁寧に描き出していく。プロデューサーの中込氏によれば、企画が動き始めたのは15年の夏にさかのぼるという。「8月に最初の打ち合わせをさせていただき、年内にはもう詳細な全話のプロットまで仕上がっていました。企画のいきさつは倉本先生の発案で、高齢者の自分たちが観やすい時間に観たいドラマがない。ならばご自分が書いてしまおうという発想だったと思います。当初は、放送を昼にするか朝にするか、毎話の尺なども含めて未定でしたが、倉本先生が描いてくださるテーマを最も良い形で表現できる枠として、平日の帯ドラマという形式だけは決まっていました。実際に脚本の執筆に入られたのは昨年の4月からですが、その前にメインキャストは8割方は決まっていたこともあり、どんどん筆が進んで。夏には全130話分が完成していました」(中込卓也氏/以下同)

 主な舞台が老人ホームであり、視聴者層は定年後の高齢者を想定していることも話題。「もちろん本音では、録画でも再放送でもいいので、すべての世代に観てほしいです。何しろ倉本先生ですから、おのずと素晴らしい広がりを持つ脚本になっています。ですが、まずはお年寄りが観やすく、共感できるドラマでなければ枠を新設した意味がありません。1週目の5話分が上がってきた最初の頃、4話でようやくメインキャストが揃ってくる構成について、もう少し早く見せられませんか、と相談したことがあるんです。せめて1〜2話あたりにカットバックで老人ホームのシーンを入れ込めないだろうか、といった提案です。すると、そうしなくていいように書いてるんだよ! と先生に一喝されました(苦笑)。本当の覚悟ができた。つまり、ゴールデンのドラマを制作する感覚だったら、テンポを考えて3話分を1本の尺にまとめてしまうかもしれない。でも、それはやらない。それこそが、このドラマを放送する意味なんだということです」

◆現在のテレビ界への痛烈な皮肉を込めた挑発的なドラマ

 実はこの作品は、現在のテレビ界そのものへの痛烈な皮肉も込められている。テレビに貢献したキャストやスタッフが入れる老人ホームなのに、テレビ局の元社員だけは入居できないという設定からして挑発的だ。「例えば昼の帯ドラマがいったんなくなってしまったことにも、当然それなりの理由があるはずです。それに対して、ほぼ完全にお年寄り向けに作ることで枠そのものを再解釈するという試みをなぜやらないんだ、という叱咤(しった)でもあると感じます。80歳過ぎたオレが寝る間を惜しんで4ヶ月で台本を書き上げた、さあ君たちはどこまでできるんだ、という挑戦状です。おそらくそんな先生の脚本に触発されて、画作りや編集を含め、現場のスタッフもこれまでの制約を突破していく底力のようなものをもらえています」

 主題歌は中島みゆき書き下ろしによる「慕情」。スケール感がありながら、個々人の心情に寄り添う繊細さを併せ持つ楽曲だ。「事前に全話の台本をお送りしましたが、それを読むかどうかは中島さんのご判断だからと考えていました。仕上がった曲をレコーディングスタジオで聴かせていただいた際、まず倉本先生が興奮してスタジオから飛び出してこられて、早く聴け、すごいぞと(笑)。そこで入れ替わりになかに入ると、なんと中島さんご本人がおられて、録音された楽曲を聴かせてくださる。本当に感動しました。曲はもちろん素晴らしいのですが、最終回までの全体を把握していなければ、絶対に書けない深い歌詞になっていました。しかも、聴き終えた私に対して、合格ですか? と中島さんが尋ねるという。もう、感激を通り越して何も言えませんよね」

 老人ホームの名称「やすらぎの郷La Strada」は、フェリーニの傑作『道』の原題との照応も予感させる。全130話の道のりをじっくり味わいたい。
(文/及川望)

【Profile】
64年生まれ、神奈川県出身。 88年に制作会社に勤務し、2時間ドラマでプロデューサーデビュー。 01年にテレビ朝日に入社した。これまでに「菊次郎とさき」シリーズ、『ハガネの女』、『11人もいる!』、『白銀ジャック』などを手がけた。

(コンフィデンス 17年4月17日号掲載)


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