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(2017/02/20)

「精霊の守り人」新シリーズ、世界観描く“街作り”へのこだわり

大河ファンタジー『精霊の守り人 悲しき破壊神』(NHK総合/毎週土曜21時)より


 NHKが、大河ドラマ等で培ったノウハウと最新の映像技術を駆使して制作する全編4Kドラマ『精霊の守り人』の新シリーズが1月よりスタート。海外での評価も高かったという前作に続き、さらにスケールアップした世界観が描かれている。

■美術・技術を駆使し、見たことのない世界観を構築

 原作となる上橋菜穂子の小説「守り人シリーズ」は、海外8ヶ国語で翻訳された、世界的人気作。そのため、“大河ファンタジー”と銘打っているが、昨年放送された前作は、従来の大河ドラマファン層とは異なる若年層の間でも話題となった。制作統括・演出の加藤拓氏も「NHKにとって新しい視聴層に訴えかけられるコンテンツになった」と振り返る。  さらに、海外展開も視野に入れた作品でもある本シリーズは、昨年10月にカンヌで開催された国際テレビ見本市「MIPCOM」にも出品。初日のオープニングイベント会場で前作と本作のダイジェスト版を4KHDRの高画質で上映し、各国の情報誌に取り上げられるなど、評価を得た。

 高評価の理由は、美術、技術、ロケ等すべてに徹底的にこだわり、原作の壮大なスケール感をドラマとして実現させたこと。前作の舞台が1ヶ国だったのに対し、登場国が5ヶ国に増えた今回は、街作りにおいてそのこだわりがさらにスケールアップ。「エスニックをテーマに“見たことのない”世界を築こうと考えた」と加藤氏は語る。

 「ファンタジーという言葉は、受け止める人によって定義が曖昧になりがちなので、今回の制作にあたっては“見たことがない”という言葉に置き換えて、出発点と方向性だけを決め、後は何が生まれるかをスタッフ全員で楽しもうと考えました。町も扮装も見たことがないものを作ろうとしたため、妄想に対して妄想を返すという“妄想合戦”みたいな会話が繰り返されましたが(笑)、制作者としては、実現するための作業も含め、非常にやりがいがありました」(加藤氏/以下同)

 VFXも前作よりさらに注力。鈴木梨央演じる異能の力を持った少女・アスラが出すパワーを、木の枝のように分岐していくシミュレーションCGで実現。撮影では、筋肉と声に反応するセンサーを鈴木に付け、モーションキャプチャと組み合わせることで、リアルタイムにビームが出る様子をモニタリングしたという。

■壮大なファンタジーにミステリー、アドベンチャーの要素をプラス

 人間ドラマとしては、前作で別れ別れになった綾瀬はるか演じる主人公・バルサと、15歳の少年に成長した板垣瑞生演じるチャグムのそれぞれの冒険が描かれるが、特に柱となるのは、副題にもなっているバルサとアスラ、2人の“悲しき破壊神”の心の動き。母親を目の前で殺されたことで、憎しみを正当化させ、自分に正義があると信じて人を殺戮してしまうアスラと、生きるために用心棒家業を生業としてきたバルサという、悲しい業を背負って修羅の道を行く2人が出会い、ともに成長していく姿が描かれる。

 「今の世界情勢を見てもわかる通り、憎しみや感情のぶつかり合いが連鎖していくと、どうしてもそこから抜け出せません。民族とは何か、歴史に敬意を払うとはどういうことかをファンタジーという名を借りて堂々と語らせてもらっています」

 綾瀬の本格的なアクションも話題となっているが、本作では、登場する国や民族が増えた分、パルクール等さまざまな体術、武術も登場。闘い方のバリエーションが増え、アクションはさらに過激になっている。

 「前作の壮大なファンタジーに、色とりどりの文化、さまざまな民族が加わった本作は、ミステリーの面白さと、血沸き肉躍るアドベンチャーの両方が楽しめる作品にしたいという思いから、“ミステリー・アドベンチャー”と銘打っています」

 さらにスケールアップしたNHKの総力をあげた挑戦に注目したい。

(文/河上いつ子)

(コンフィデンス 17年2月20日号掲載)


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