ヒットがみえるエンタメマーケット情報サイト

  • ORICON BiZ onlineのご案内
  • お問い合わせ
  • サイトマップ

特集記事一覧 > 特集

(2013/12/16)

「クラウドファンディング」日本における成功のコツ


09年4月に登場した米クラウドファンディングサイト『Kickstarter』。日本からもゲームクリエイターの稲船敬二氏や、アニメ制作会社・トリガーなどが参加している

 ネット上でプロジェクトを公開し、ユーザーから資金を募る「クラウドファンディング」。米国を中心に海外で話題を集めており、日本でもここ1年の間でサービスが急増している。しかし海外に比べると成功事例が少ないのが現状だ。今後、日本で展開するにあたって、どういった点に注意し、どのようにアピールしていけばいいのか。成功のポイントを探った。


■日本で続々とサービス増加クラウドファンディングとは/

 ここ数年で日本でも注目を集めるようになってきたクラウドファンディング(crowd funding)とは、群衆=crowdと資金調達=fundingを組み合わせた造語。ネットを活用した新たな資金調達プラットフォームのことである。これまで、新製品を開発したり、映画を製作したりする場合、必要な資金の調達は銀行やスポンサーを通じて行うのが一般的だったが、クラウドファンディングではネット上で幅広く出資者を募り、あらかじめ設定した期限内に目標金額(もしくは件数)を達成できなかった場合は支援者に返金される“All or Nothing方式”になっている(ただし最近では、未達成でも集まった金額でプロジェクトが実行されるサービスも登場している)。

 集められた出資金はクラウドファンディングの運営者によって仮にプールされ、目標をクリアした場合のみ、その金額に応じた一定の金額が利用料として運営者に支払われる。それぞれにとってリスクが少ないことから、個人起業家やクリエイター、NPO、自治体など幅広いジャンルで利用されるようになってきた。

 出資者に対するリターンの提供方法でサービスのタイプを分けることができ、主に「寄付型」「投資型」「購入型」がある。純粋にファンとして投資するのが「寄付型」で、お金や株などで支払われるのが「投資型」である。

 最も多いのは現物を提供する「購入型」で、具体的には新製品を特価でいち早く手に入れられる、映画の試写会に招待する、スタッフとの食事会や交流会に参加できるなど、有形無形の様々な方法を設定することができ、いかに魅力的なリターンを提供できるかが調達成功の要因になっている。


■市場規模は2025年に930億ドルに成長?

 米Massolution社の資料によると、12年におけるクラウドファンディング全体での資金調達額は27億ドルで前年から81%増加している。資金調達を成功させたプロジェクトも100万件以上にのぼり、さらに世界銀行の調査レポートによると、年間で調達可能な資金総額は25年には930億ドルに達し、世界のベンチャーキャピタルが12年に調達した金額の約1.8倍にもなると予想されている。クラウドファンディングのプラットフォームとなるサービスも年々増えており、アジアでは11年から日本をはじめ、韓国、香港、シンガポールなどでサービスが開始されている。

 インターネットで資金を集める仕組みはクラウドファンディングの登場以前からあったが、ネット上での仕組みが浸透しはじめたのは、09年4月に登場した『Kickstarter』による影響が大きい。

 同サイトは数々の大規模な資金調達を成功させ、話題を集めた。資金調達に関しては国によって法規制が異なり、慣習も異なることからワールドワイドでの展開が難しいとされていたが、『Kickstarter』は12年からイギリスやカナダなどでもサービスを開始し、今後、さらに多くの国へ拠点を拡げるのではないかと見られている。


■日本独自のサービスやプラットフォームが登場する理由

 国内では東日本大震災の被災者や被災地支援を集める手段として、11年3月に『READYFOR?』が登場したのを皮切りに、『CAMPFIRE』や『MotionGallery』といったサービスが次々に登場している。今後市場が拡大するとされているが、その理由としてインターネットの決済手段の拡大が挙げられる。電子商取引をはじめとした事業者に対するクレジットカード決済サービスの提供を行うサービスの登場や、スマートフォンによる小口決済サービスの参入で、クラウドファンディングへの投資がしやすくなると考えられているためだ。

 また、13年9月には金融庁審議会により、インターネット経由による未上場企業への投資上限額を1億円にすると大筋で決まり、それに合わせたルール作りも14年を目標に整備が進むなど、大口の資金調達方法の一つとなりうることから、さらにサービスの参入が増えると予測されている。


■決め手はソーシャルの活用とファンの取り込み

 日本は世界に比べると利用件数は少ないが、成功事例の理由を分析すると、出資者に対してリターン以外の魅力となる情報や一体感の共有ができている点が挙げられる。特にクリエイターの場合、製作現場の裏側やスタッフの熱意を伝えるという、ソーシャルネットワークを使ったプロモーションと捉えての、ユーザーに対するきめ細やかな対応が必要になる。海外では、映画や音楽、出版などのメディア制作で、ファンとダイレクトにつながるソーシャルなマーケットとしてサービスを提供するケースも見られる。実際、マーケティングでの活用は国内でも増えている。

 ただ、通常とは異なり、有名なアーティストがクラウドファンディングを利用すると成功確率はかなり高くなるが、いかにもプロモーションのためだけに利用しているのが見えてしまうと、失敗するどころかバッシングにつながるので、気をつけなければならないところでもある。

 日本では個人がクラウドファンディングを利用する場合、なかなか信頼が得られにくく、運用の負担が意外に大きくなる場合もあるので、まずは中小企業やグループ、学校、NPOといった組織での資金調達手法として定着するのではないかと見られている。その場合、前述したように魅力的なリターンをどう提供するかのアイデアが必要で、すでに『GREEN FUNDING』のように、クラウドファンディングの運営全体をサポートするタイプのサービスも登場している。今後はこうした専用のコンサルティングビジネスも増えてくるかもしれない。


■成功のコツは「物語設計」と、「密なコミュニケーション」

 日本におけるエンタテインメント関連のプロジェクトは、比較的、目標金額100万〜300万円規模のものが多く、支援額はプロジェクトによって差はあるものの、1万円前後が多いようだ。マスよりも特定のターゲットに向けて発信したほうが、高い金額を得やすく、成功の確率も高いため、少数の参加者でもいかに納得させることができるかがカギとなる。

 考えられる課題としては、プロジェクトの事前審査はあるものの、資金が集まった後に何らかの事情で頓挫してしまった場合、支援金を完全に担保できるプラットフォームが少ないこと。また多くがカード決算システムを取り入れているため、若者層にアピールできないことなど。しかし今後日本でも成功事例が増えれば、そういったデメリットも改善されるかもしれない。実施するうえでの成功のポイントは主に次の3つだ。

1、明確に理由と目的を示し、支援者の気持ちを動かす

 これまでどんな思いで活動を続けてきたのか。なぜクラウドファンディングで資金を集めるのか。誰にアピールしたいのかなどを、写真や動画を使って明確に伝える。そうして発案から思い描く成功までの物語を示し、支援者の感情に訴えかけること。プロジェクト公開前に、マーケティングプランを設計しておいたほうがいいだろう。

2、密なコミュニケーション

 公開後も、現在の心境や支援者数の動向などを逐一報告すること。「あと○人、支援をお願いします!」「みなさんのおかげで〇人集まりました」といったアピールを積極的に行い、多くの人を巻き込んでいく。密なコミュニケーションはコアファン作りにつながるはずだ。

3、付加価値のあるリターンがある

 例えば、アーティストの支援であれば、「本人に会える」「CDに名前が載る」「レコーディングを見学できる」など、普段体験できないリターンを用意する。その感動はSNSでも拡散されやすく、認知にもつながる。

 クラウドファンディングはファンクラブのようなもので、単にプロジェクトを成功させるためではなく、同じ熱を持つファン同士をつなぐ役割も果たす。まずは、「ファンのために何ができるのか」を優先して考えてみたほうがいいのかもしれない。

(ORIGINAL CONFIDENCE 13年12月16日号掲載)



クラウドファンディングの主な仕組み(図)
■関連記事
> 「まとめサイト」でも話題、三浦大知アルバム躍進の背景(13年12月9日号)
> EC市場で高まるビジネスチャンス(13年11月18日号)


→ ほかの記事を読む
→ サイトTOPに戻る

Go to Page Top

Go to Page Top