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(2013/07/22)

亀田誠治、Q・ジョーンズ公演への“亀の恩返し”


音楽プロデューサーの亀田誠治が13年5月18日、19日に東京・日本武道館で主催した音楽イベント『亀の恩返し 2013』。ステージと観客が一体となった極上の音楽体験が味わえる2日間となった

 数多くの人気アーティストの楽曲を手がけ、ヒット作を世に放ってきた音楽プロデューサー・亀田誠治氏。今年5月には、ゆかりのアーティストを集めた主催イベント『亀の恩返し2013』を4年ぶりに開催し、2日間で2万3千人を動員した。精力的な制作活動の傍ら、最近ではオフィシャルページで若い才能が作品を発表する場を提供し、自身の知識やスキルをシェアする番組に積極的に参加するなどの取り組みも目立つが、その真意とは。また、稀代の名プロデューサー、クインシー・ジョーンズの来日コンサートで、亀田氏がプロデュースする日本のトリビュートパートに込めた思いについても聞いた。


■前回の『亀恩』ライブから4年かかった理由

 4年ぶりに『亀の恩返し2013』が開催されました。前回が好評だったので、もう少し早く開催されても良かったのではないかとも思いましたが。

亀田 4年の月日が経過したというよりは、4年かかってしまったんですね。前回のライブの後に、確かに続けてやろうという話も出ましたが、同じ内容の繰り返しになってしまうことを恐れました。そこで、まずは自分がもっと成長しなければならないと思ったんです。たとえ出演メンバーが同じでも、次回のライブまでに、彼らと一緒に新たなヒット曲、代表曲を作って、それをステージで披露したい。そう自分に課したんですよ。

 もちろん出演者の皆さんはトップクラスのアーティストだから、いい成績を収めていますが、それとは別の、僕のヒット指数、ヒット偏差値の基準があるんです。そこに自分が達するのに、思った以上に時間がかかってしまった(笑)。これはやれるかもしれない、そう思えたのは、いきものがかりの「風が吹いている」(NHKロンドンオリンピック・パラリンピック放送テーマソング)の話をいただいた頃で、そこから、今回のライブの準備に入りました。

 出演者の顔ぶれ、コラボレーションの妙と見どころ満載のライブ内容でしたが、何よりも驚いたのは音質の良さでした。

亀田 最高のミュージシャンに集まってもらいましたからね。しかも、僕のファーストコールミュージシャンだから絆も深いわけで、それがベースにあったことも大きかったと思います。また、音響や照明等のスタッフもトップクラスの人たちが集まってくれました。それって僕がすごいのではなく、アーティストの皆さんが僕と一緒にたくさんのヒット曲や素晴らしい曲を作ってくれて、その作品が世に羽ばたいてくれたからこそ僕は信頼を得られているんですよね。本当に感謝しています。

 今回はアリーナにY字型のステージを置いて、それを観客が360°ぐるりと取り囲むかたちにしました。だから、スタッフの動きはもちろん、ステージに置かれたプロンプターまで、全部観客に見えてしまうわけです。でも、それでいいと思いました。ライブの終わりのエンドロールで、スタッフクレジットを流し、彼ら全員に僕からのお礼の言葉を伝えましたが、『亀恩』の観客の中には、彼らの仕事ぶりを見て、将来音楽の仕事に就きたい、この世界で働きたいと思った人がたぶんいると思うんですよ。CDセールスを伸ばすことも音楽業界の活性化につながりますが、一方で、音楽ビジネスに関わる職種はこんなにたくさんあって、音楽ビジネスはこんなに楽しいんだよ、ということをリアルに観客に伝えることも、音楽業界の活性化につながると思うんです。


■“恩返しプロジェクト”スタートのきっかけ

 この4年の間に音楽を取り巻く状況も変化しました。

亀田 震災も体験しましたからね。あの時はポップミュージックをやっている意味を深く考えさせられましたし、多くのミュージシャンが無力感に襲われたのではないでしょうか。その時に、いろんな人たちの話を聞き、被災地に実際出向いてみて、僕は決めたんです。辛い状況にある人たちの心の中にすでにあって、鳴り続けている音楽を作ろうと。つまり、大衆音楽として、あらゆる世代、時代を超えて人々の生活に溶け込んでいく、そんな音楽を作らなければならない。それが僕の使命だと思ったんです。震災からちょうど2ヶ月経った頃でした。また、僕が直接プロデュースしたものでなくても、そういう状況を作るお手伝いをしたいとも思うようになりました。そこから僕の中での“恩返しプロジェクト”が始まったんです。

 それまでなんとなく思っていたイメージが明確な目標に変わったわけですね。

亀田 それを実現するためならば、時間が許す限り何でもやろうとも思いました。僕の立ち位置や見え方、アーティストバリューなんてことにはこだわらないようにしよう。そして、僕の持つ知識やスキルは全て提供していこうと、そう決めました。それもあってなのか、この数年、音楽の作りかたもシンプルになっているのを感じます。水が流れるごとくではないけれど、音楽を作るプロセスのなかで、自然に生まれて自然に耳に入ってくる、そういうものがいい音楽で、人々の心の中に溶け込んでいくのではないかと思います。歳を重ねて自分の生き方がそうなってきているからかもしれませんね。

 オフィシャルサイトで若い才能が作品を発表する場を提供されていますが、今年1月にNHKで放映された『亀田音楽専門学校』も、“恩返しプロジェクト”の一環というわけですね。ゲスト講師役の平井堅さんが事例を歌ってみせるなどわかりやすくかつユニークな内容でした。

亀田 あるアーティストから「これ以上僕らの手の内を明かさないで」って、冗談で言われました(笑)。平井さんがあそこまで手伝ってくれるなんて、なかなかないことだと思います。僕にとって初のミリオンヒット作となった『無罪モラトリアム』(99年)を出発点として、この14、15年でアーティストとの深い関係が築けてきたからこそできたことのひとつだと思っています。あの番組は、僕らが普段スタジオで交わす会話を再現したものです。「このクリシェ泣けるね」とか、そういう何気ない会話を積み上げながら、音楽は生まれていく。僕はそういったスタジオでのコミュニケーションを何より大事にしています。まずは音楽があって、そこでお互いにどれだけ真摯に正直に語り合えるか。そこを出発点にしたいんですよね。

 そのほかにも、ラジオ番組を帯で担当されるなど、活動の幅も広がっていますね。

亀田 昨年、東京事変の活動が終わった後にスタートしたJ-WAVEの帯番組(「BEHIND THE MELODY〜FMKAMEDA」)も2年目に入りました。この番組を始めたことによって、僕が愛してきた音楽、『ヒットの理由』(『ORIGINAL CONFIDENCE』コラム)でこれまで書いてきたことが全てつながって、もう一度整頓されてきているのを感じています。プロデューサーとして作ってきた音楽と、ヒットチャートを形成してきた音楽が、これまで違うレーンを走っていた気がしていましたが、今は一緒のレーンで併走しているような感覚というのでしょうか。俯瞰したいい角度でヒット作を見ることができるようになったと思っています。番組もコラムも作品を分析はしますが、取り上げる共通ポイントはレコメンドしたい、いいものを皆に知らせてシェアしたいという気持ち。原稿を書いていて、向き合う音楽との距離感がだんだん近づいてきて、今、精神的にとてもいい状態です。選択肢もどんどん広がっていくのを感じていますし、この数年で素晴らしい人との出会いもすごく多いんですよ。

 以前から時間が許せばできるだけ仕事を受けるようにしているとおっしゃっていましたから、そういうスタンスが出会いを引き寄せるのかもしれません。

亀田 僕にとってTwitterを始めたのも良かったようです。始めたきっかけは、被災地の方たちに向けて能動的にポジティブな波動を送ろうと考えたからなのですが、つぶやいているうちに気づいたんです。やり取りする内容がポジティブであれば、ポジティブな言葉が集まってくる。それを読む人も温かな気持ちになる。逆にひと言でもネガティブな言葉を発すれば、そういう言葉が集まってくる。きっと僕はTwitterとの相性がいいんでしょうね。ファンだけでなく、いろんな人たちとのやり取りから得るものはとても多いです。

 ところで、昨年東京事変の活動を終えたわけですが、その経験を通して、以前と違った点や意識の変化を感じますか。

亀田 若い世代の力を信じる気持ちが強くなりましたね。バンドでは僕がひと回り上で、レコーディングをし、ツアーにも出て、彼らと一緒に行動することによって、若者の感覚は正しいと常に意識するようになりました。「まだ若い者には負けない」と言うのは簡単だけど、僕は正直言って彼らの方が優れていると思っています。でも、彼らを押し上げるお手伝いはできると思う。仲良しのハマ・オカモト君(OKAMOTO’S/ベーシスト)なんて、僕のことを東京事変で知った世代なんですよ。僕の子供の世代、次のジェネレーションに自分の音楽が届いていて、そんな彼らが僕と一緒に何かやりたいと言ってくれるのはすごく幸せなことだし、話していてとても刺激を受けます。


■敬愛するQ.ジョーンズへの“亀の恩返し”

 今年80歳になったクインシー・ジョーンズの功績を称える日本公演が7月31日と8月1日に開催され、日本のアーティストによるトリビュートパートを亀田さんがプロデュースされます。敬愛してやまないプロデューサーだけに、感慨もひとしおではないですか。

亀田 稀代のプロデューサーなので音楽的な影響を受けているのはもちろんですが、何よりも音楽家としての姿勢に感銘を受けています。クインシーの言葉に「The music comes first」(迷ったら音楽に訊け!)とあって、僕の座右の銘にしています。今年2月の終わりに、トリビュートパートの構想を話しにNYに会いに行ったのですが、僕の提案に「よしやろう、SEIJI!」、そう言ってもらえて本当に嬉しかった。

 どんな内容になるのでしょうか。

亀田 今のあらゆるショービジネスの基本形は、クインシーの音楽制作の現場から生まれたもので、僕らは彼の切り拓いた道の上を歩いているんです。そのクインシーに対し、心からの感謝の気持ちを日本から伝えたい。ジャズ、ボサ・ノヴァ、リズム&ブルース、ロック、ポップ、ブラックミュージック、HIP HOP…、あらゆる音楽を愛しノージャンルで活躍してきた人なので、今回、僕がプロデュースするパートは、ジャンルを越え、素晴らしい生パフォーマンスを見せてくれるアーティストに集まってもらいました。1組ずつクインシーにゆかりの楽曲を奏でてもらいます。クインシーの子供世代の僕がオーガナイズして孫世代のアーティストまで出演する、まさに3世代にわたった共演です。そこから何か温かいものを感じてもらえるといいなと思います。

 『亀恩』に続きクインシー・ジョーンズのトリビュートコンサートと、亀田さんがハブとなって面が広がっている印象を受けます。

亀田 一つひとつ積み上げていっている手ごたえを感じています。また、今後シニア層に差しかかる仲間が僕の周囲にたくさんいます。これまで彼らと一緒に多くのヒット作りをしてきました。今後、彼らの活動のサポートをするためにも、僕は本当に頑張っていきたい。彼らがもっと長い時間泳いでいられるような音楽業界の環境を作っていきたいと思いますね。そのためにも、いい曲だけを作って現役でヒットを出し続けることが大事なんです。
(ORIGINAL CONFIDENCE 13年7月22日号掲載)


クインシー・ジョーンズの来日公演にて、亀田パートの出演アーティスト
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