ヒットがみえるエンタメマーケット情報サイト

  • ORICON BiZ onlineのご案内
  • お問い合わせ
  • サイトマップ

特集記事一覧 > OCTW

(2013/06/24)

サカナクションが切り開くライブの可能性


13年3月から全国ツアー「SAKANAQUARIUM2013 sakanaction」をスタートさせたサカナクション。幕張メッセ公演(5月18、19日)および大阪城ホール公演(5月22日)でドルビーの6.1chサラウンドサウンドを導入した

サラウンドサウンドが導入されたサカナクションの幕張メッセ公演(13年5月18、19日)&大阪城ホール公演(5月22日)は、ライブ音響の可能性を切り拓いただけでなく、リスナーの耳を“音質”に向けさせることに成功したという意味でも、画期的なものだった。この壮大な挑戦は、いかにして実現するに至ったのかを検証する。


■サカナクションのライブ史に残る壮大な挑戦

 ツアーの度に、新しい技術や、誰も行ったことのない演出法を積極的に取り入れてきたサカナクション。レーザー光線やオイル・アート、NINJA LIGHTなど、これまでは視覚的なアプローチで注目を集めてきたが、音に強いこだわりを持つ彼らが今回取り組んだのは、幕張メッセ&大阪城ホール両公演でのサラウンドサウンドの導入だ。

「やはり音楽ですから、ライブでも聴覚をクローズアップしたかったんです。最新作『sakanaction』ではバイノーラル録音を取り入れていて、立体的な音像をライブで再現したいというところから、ドルビーさんと相談を始めました」(ヒップランドミュージックコーポレーション・野村達矢氏) 「音楽パッケージ製品にドルビー技術をお使いいただくことはあっても、ライブへのサラウンドサウンド導入は、私が知る限り世界的にも初めてのことでした」(Dolby Japan・寺嶋祐一氏)。

 サラウンドは、元々シネマ用に誕生したシステム。今回もシネマ用7.1chを基本に、そこから台詞用のセンター・スピーカーを取り除いた6.1ch方式が使用された。幕張メッセ公演前日のゲネプロに立ち会った筆者は、フロアのあらゆる場所でサウンドをチェックしたが、驚いたことに、2万人を収容する巨大スペースにもかかわらず、どの場所でも、ほぼ同じサウンドが体感できた。特に、ステージから一番離れたCブロック(右頁囲み参照)の音の良さは、特筆すべきクオリティであった。

「音楽はリズム、つまり時間に支配されるので、リア・スピーカーだけだと、例えばCブロックのようにステージから遠く、視覚と音の到達時間に明らかな差が生じる場所で、サラウンドを音楽的に成立させることは困難です。それが、ディレイ・スピーカーとサイド・スピーカーでブロックを囲むようにスピーカーを置くことによって、音的に上手く補正できました」(野村氏)

 そして注目すべき点は、サラウンドの使い方。一般的にサラウンドと言えば、音が飛び回るような特殊効果がイメージされがちだが、今回は、そういった“飛び道具”的な使用は最低限に抑えられ、会場全体を音で包み込むような音場作りに重点が置かれていた。

「観客の目はステージに向いているので、それを音が補完するためには、聴覚が視覚に勝ちすぎないバランスが重要です。それによって、音に包み込まれる感覚を生み出せたと思います。我々は日常的に音に囲まれていて、人間の知覚は本来、サラウンドに慣れています。ところが、テレビやオーディオは無理矢理に2ch化しており、現実と大きなギャップがあるのです。今回は、“作られた音”ではなく、自然に音楽を聴かせられたところが大きなポイントだったと思います」(寺嶋氏)

 結果、観客一人ひとりに、従来のライブでは体験することのない「自分が音楽の中心にいる」という未知の体験を提供できたことで、終演直後、Twitter上は「素晴らしかった」「感動した」といった感想で埋め尽くされた。つまり、ライブ音響としてのサラウンドが、玄人向けの技術論としてだけではなく、一般的な音楽ファンに“音の良さ”として確実に伝わり、“またサカナクションのライブを観たい”という感動を呼び起こさせたのだ。リスナーの耳を開かせるという意味でも、ライブ史に残る壮大な挑戦だったと言えるだろう。


■ハードとソフトの隔合で実現極上の音楽体験

もちろんそこでは、技術というハード面だけでなく、綿密に練り上げられた演出というソフト面の工夫も見逃せない。

「僕が最初にお願いしたのが、映画館で必ず流されるトレーラー映像をライブのオープニングで使いたいということでした。これこそが、ドルビー・サラウンドの音の基準だし、このトレーラーで、お客さんはどの方向にスピーカーがあるのかを理解できます。そうすると、音に対する意識が変わるわけです。その直後に場内を暗闇にして、より聴覚を研ぎ澄まさせる。スクリーンにモノクロ写真のスライド・ショーを映し出し、次第にムービーへと変えて聴覚と視覚を重ねていきながら、サカナクションの世界に入っていけるように演出しました」(野村氏)

 今回の成功で、新しいライブ音響として間違いなく注目を集めるであろうサラウンド。寺嶋氏によると、すべての映画館で構造が違うように、どのような環境(会場)でも、そこに適したシステムを組むことは可能だと言う(実際にサブ・ウーファーに関しては、他のツアー会場でも導入された)。さらにシネマ用としては、従来のサラウンドスピーカーに加え、天井スピーカーにも自在に音を振り、より臨場感を生み出せる新技術“ドルビーアトモス”が既に開発されており、将来的に音楽への応用も期待される。また、現状では限界があると言われている生演奏のリアルタイムなサラウンド処理も、近年のハード/ソフトの進化具合を考えれば、実現は時間の問題だろう。

 そこで気になるのが、コスト面も含めた実用性だ。しかし野村氏は、「そこはむしろ、“やる側”の問題」と言う。「本気で挑戦する意思と、サラウンドを消化できる勝算がない限り、相当に難しいことです。しかも、ライブをプロデュースする側としては、音楽の良さを伝えることが本質。“サラウンドがすごかった!”だけでは困るんです。当然、“サカナクションがすごかった!”でないとダメで、そのうえで、“ドルビーはすごい!”と言わせたいし、言って欲しい。これを両立させるライブを作り上げないといけないし、そこは絶対に譲れない部分でした」と語る。

「システムをセットでご提供するといった類のものではありません。皆さんの音を追及する情熱と努力によって、結果はずい分と変わってくると思います。ドラマや映画でも、映像だけで涙を流すことは難しいですが、そこに音が組み合わさることで、感動は最高潮に高まります。音が人間の感情に与える要素は、すごく大きいんです。そういう意味でも、ライブというコンテンツは、両者が最高に上手く組み合わせられるものだと、今回、強く感じました」(寺嶋氏)

 音楽をリアルに楽しむ“ライブ”だからこそ、その場にいないと体感できない音の演出には、まだまだ発展の可能性が大いに残されている。(『ORIGINAL CONFIDENCE』13年6月24日号掲載)


「SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction」スピーカー配置図
■関連記事
> 次世代型ペンライトの可能性(13年4月22日号)
> “ヒトカラ”など利用形態が多様化 カラオケルームの音楽プロモーション(13年2月11日号)



つづきはこちら

Go to Page Top


週刊『コンフィデンス』とは

@音楽・映像・書籍のランキング&マーケット動向
Aエンタテインメント市場の調査・分析
B人気作のヒット分析
C業界キーマンのインタビュー

などが網羅できる定期購読誌です。


コンフィデンス 雑誌購読のお申し込み

 

Go to Page Top